【第7話】フェイスブックの活用法2


フェイスブックの活用法2
ー商店街も一人に寄ってもらうー

パン屋の朝は早い。4時にはもう仕事を始めている。

しかし、今日ほど時間がたつのがもどかしいと思った日はない。

――――早く、、早く、時間よ過ぎろ、、、

半分だけ開けていたシャッターを全部開け、開店の準備が終わったのが8時。

でも、まだ寛和さんのところの洋服屋は開かない

早く開け、、早く、、、、

何度も何度も表に出ては、開いていないかを確かめる。9時オープンだと知っていても、ついつい表に出て、7軒先にある寛和さんのお店のほうに目をやってしまう。

まだ人通りもまばらな商店街で、シャッターを開ける音がかすかに聞こえる度に、外に出ては寛和さんの店を見た。

――――ガララ

また、シャッターを開ける音が聞こえた。すぐさま外にでる。
寛和さんの店が開いた。
一目散に駆け寄り、

「寛和さん!!!」

「おっ、一郎ちゃん、どうしたのこんなに早くから血相変えて」

「すみません、うちに来ている三木なんですけど、彼を使って商店街でフェイスブックの講習をやりましょう。」

デジタルに強い寛和さんは少し困った顔をして、

「そりゃいいけど、、ちょっと早くないですか?うちの商店街はメールだってうまく使えない人が多いんですよ」

と言った。

「やらなきゃダメです。今は情報を出していない所はいないも同じなんです。」

三木の受け売りの言葉で、三木ほどはうまく話せないが、『全てが意味のある情報』になったと言う事と、『記憶という情報』で買ってくれているお年寄りはいつかいなくなるということ、そして、『フェイスブック』を使えば一人一人が発信者になれることを話した。

「フェイスブックなら、楽しみながら『情報』を出すことが出来るんです。もしかしたら、この商店街に人が来ないのは『情報』を出していないからかも知れないんです。」

そんな言葉を言いながら多分、それは間違い無いと心の中で思っていた。

商店街のみんなは新しい物を仕入れたり、常に商品開発をしたり努力はしていた。それが報われないと感じて、いつしか段々やる人が少なくなってきたけど、それは『情報』が伝わっていないことが原因だったんだと思う。

インターネットで何でも買えるようになったから、お客様が商店街に来る用事がめっきり減った。

コンビニの理論と一緒だ。寄れば目にする物が沢山ある。『新しい商品』だったり、『必要な物だったり』すべては『商店街に来てくれればこそ』だったんだ。

新しい商品は、『知らないものは探せない』『思い出さないことは探さない』だから検索はしてもらえない。

お店と一緒だ。商店街もまずは『一人によってもらう』ことに力を注がなくてはいけない。

そのためにはきっと『フェイスブック』は役にたつ。

たぶん、この『フェイスブック』を上手く使うのはインターネットをうまく使うのと同じ年代だ。

若い年代に『情報』を届けるのにきっと役に立つ。商店街のみんなのやる気にもきっと役に立つ。

寛和さんは勢いに押されたのか、それとも頭のいい人なのでこのつたない説明から何かを感じてくれたのか
「解りました、すぐ役員会にかけます。」
と言った。

その日の昼過ぎに三木がやってきた。

講師をやってもらうのを正式にお願いしたいという事と、『商店街に来てくれればこそ』の持論を展開すると、

「ビックリですね、、、一回聞いただけで、そこまでキッチリ理解されてるとは、、、

そうですね。仰るとおりです。寄れば目にする物があります。
もともと商店街はそうやって『情報』を自然に届ける事ができたのです。

さらに言うならば、テレビから流れる商品が買えない、『情報の何分の一かは意味のないもの』時代だった時、、例えばあるものが欲しくて探していると、必ず近所のお店に頼るしかありませんでした。

お店側は特に何もしなくてもお客様が来てくれたし、期待に応えることで、ファンにもなってくれました。

そして同時に最大の差別化ポイントである『人』を伝えることができた。

ところが今はインターネットがあるので探し物があってもお店に来ません。
来なければ、最大の差別化ポイントである『人』を伝えられない。

差別化ポイントが伝えられなくなったので、お客様に値段だけで比べられ、小さい所はとても勝てない状況になっています。

意外と皆さん気づいていないのですが、お客様との接点もスゴク少なくなっているのです。

値段合戦をしないためにも、お客様との接点をつくらなければいけないのにお店に来ない。

まずはここからクリアしなければなりません。

どういう形でもいいので、『情報』を出して、まずはお店に寄ってもらう。『フェイズブック』はその一連の流れを取り戻す事がでるツールです。

時間や空間を越えて『人』を伝えられるので小売店にとっては大チャンスです。」

――――その日の晩、寛和さんから電話が入った。

「役員会通りました。会場は商工会議所を借りておきます。商店街の皆さんには今から同報フファックスと一斉メールで同時に流しておきます。

三木さんの対応はよろしくお願いしますね。」

「了解しました。ありがとうございます!」

電話を切ったあと、少し変わった商店街を想像して興奮した。

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