【第10話】スマホのススメ


スマホのススメ
ーいつ変えるの?今でしょ!ー

――――ありがとうございました。

後から店員の声が聞こえる。
紙袋を手にし、自動ドアを通り抜け表に出た。

右手にiPhone。
ついにスマホデビューをした。
変る気はなかったのだが、三木に説得されて変えた。

どこかで面倒臭いとか、現状を変えたくないとか思っていたというのは正直あった。
でもそれじゃあいけないんだ。

――――話は昨日に遡る。

その、『ガラケー』なんですけどね。
唐突に三木が言った。

「『ガラケー』ってなに?」

「その電話とメールしかできない携帯のことです。日本独自に進化してきて世界と互換性が全く無い。まるでガラパゴス諸島のようだということでガラパゴス携帯。略して『ガラケー』と言われます。」

「すげえ言われようだなあ、、、、」
苦笑した。

「まあ、そんないわれはどうでも良くてですね。フェイスブックにも慣れてきたようですし、スマホに変えましょう。」

「ええ、いいよ、、、」

「ダメです。たぶん、スマホが怖いと思ってらっしゃいますよね。
スマホなんて難しくありません。うちの8才の娘は人の目を盗んで勝手に使ってますよ。」

「子供は早いなあ、、、」

「それ、皆さん良く言われるんですけど、8才の子供が使えるものが、45才の大人に使えないわけないでしょう。
子供が早いんじゃなくて、大人が遅いんです。
守りに入っているんですよ。

現状を変えたくないってどこかで思ってますよね。
せっかく携帯の操作を覚えたのに、またスマホの操作を覚えなければならない。
面倒くさそうとも思ってらっしゃるかもしれません。
その気持ちは分かります。

ただ、ここに関してだけいうと変えなければいけません。
商売をやられている方は絶対です。はっきり言ってその『ガラケー』の数倍簡単で、数倍役に立ちます。

使ってみて下さい。たかが携帯ですよ?」

――――そして今日のこの日を迎えた。

店に戻ると、定休日にも関わらず三木が店の前で待っていた。

「少しレクチャーしようかと思いまして、、、」
本当の所は買いに行かなかったら再度説得するつもりだったのだろう。

ありがとさん。と言って、店を開けて二人で中に入った。

アプリで真っ先に落としたのはフェイスブックだった。
パソコンで使い慣れているせいかフェイスブックにはあっと言う間に慣れた。

これは便利だ。いちいちパソコンの前にいかなくてもお客様への返事ができる。

面倒くさいと思っていたスマホの入力も携帯の時と大して変わらないし、何よりも一番感動したのが音声入力。新調したiPhoneには音声入力もあって話すと文字に変えてくれる。

打つのが苦手な自分にとって、これほどありがたい物はなかった。
その他にも三木は地図や、電車の乗り換え案内、翻訳などのアプリを落として説明してくれた。

結論からいえば三木の言うとおり変えて良かったと思う。

改めて、知らず知らずのうちに臆病になっていたんだなと思う。
お店が変わらなかったのも、商店街が変わらなかったのも、もしかしたら、
こうした臆病な気持ちの積み重ねが影響しているのかもしれない。

たかが携帯を変えただけなのに、大事な何かを思いだした気がする。

「守りに入っちゃダメだよなあ、、、」

呟くように言った。

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