【第16話】『情報』を記憶すると言う事
『情報』を記憶すると言う事
ー届かない、記憶されない情報は存在しないも同じー
「『情報』において、一番大事な話をしますね。」
A看板を書くのに苦労しなくなり、フェイスブックにも毎日欠かさず投稿し、少しだけ『情報』を出すことに慣れてきた頃、三木がこう切り出した。
「今までずっと『情報を出す』という話をしてきましたが、『情報』は出すだけではなく『届いて』【記憶】される必要があります。以前、一郎さんは家電の会社から送られてくるダイレクトメールを封も開けずに捨てたりすることがあるって仰ってましたよね?」
「うん、あるね。」
「それはつまり、自分の『情報』もそう扱われている可能性があるわけです。届かない情報は記憶されない。今は『情報』が捨てられる時代なので、『情報』が届いて【記憶される】ということはとても重要な意味を持ちます。」
三木は鞄からノートとサインペンを取り出しすと、何かを書き始め、全部書き終えるとそのページを切り取り、こちらの方に向けて差し出した。その紙にはこう書かれていた。
1、その情報に【連続して触れる。】
2、その情報に【強烈に魅力を感じる。】
3、その情報を【発信している人に興味がある】
4、その情報に【関連した思い出がある・できる】
5、その情報に【感動する】
6、その情報に【共感する】
7、その情報が【相手の求めている物と一致する】
8、その情報に【触れることで高揚感を感じる】
9、その情報を【記憶しやすい状態に置き換える】
「情報が届く、記憶される、ということはこの9つの種類があります。まず1番、その情報に【連続して触れる。】
単純なことなのですが、情報は一度だけでなく、何度も出した方が『届く』確立は高くなります。そして、二度三度と触れるほうが『記憶される』可能性が高くなります。
深夜の通販番組なんか分かり易いですよね。興味がそれほどないにも関わらず、何度も同じCM見ている内に商品の名前から金額まで全部言えるようになってしまう。」
「あっ、なんかそれすげえ解る。腹筋の機械とかでしょ、確かに覚えちゃうよな、全然興味ないのに」
「ですよね。また、一人が5回出す『情報』よりも、5人が1回づつ出す『情報』のほうが届きやすく記憶される率が多くなります。」
「へえ、そんなもんなんだ。」
「続いて、2番その情報に【強烈に魅力を感じる。】大好きなアーティストがライブにいつやるとか、ずっと楽しみにしていた商品が発売されるとか、魅力のある『情報』は『届くし』すぐ覚えます。
私みたいなタイプの場合、新しいiPadやiPhoneがが発売されるという『情報』がそれにあたりますね。」
「なるほど、覚えそうだね。」
すこし吹き出しながら言った。
「3番、その情報を【発信している人に興味がある】芸能人や、作家さんなど、自分の興味がある人が発信する情報は当然届きやすいし覚えられやすい。また、身近な所では友人。ちなみにここが今、フェイスブックが重要といわれている由縁です。フェイスブックは本名であること、また、基本的には知り合いと『友達』になるというところから、『捨てられにくい情報』つまり『届く情報』で『記憶されやすい情報』と言われています。」
「ふ~ん、なるほどねえ」
「4番、その情報に【関連した思い出がある・できる】人は楽しかった記憶とワンセットで覚えた場合は記憶して忘れなくなります。子供のころ行ったレストランで今でも良くいくレストランとかありませんか?」
「あるね。レストランじゃなくて喫茶店だけどね。そこは子供の頃から東京に出た伯母や従兄弟が帰ってくると、必ずみんなでソフトクリームを食べに行ったんだ。今でも従兄弟がこの街に来ると、必ずその店に行きたいというね。」
「ですよね。思い出がある店は忘れられにくく、またそのお店がが出す情報は、届きやすくなります。ディズニーランドはもっと複合的ではありますが、基本はこれです。」
「なるほど」
「5番、その情報に【感動する】感動するエピソードや綺麗な景色や写真、こいうったものは届き易いし、記憶されやすいです。旅行雑紙の写真なんかはこの類ですね。6番、その情報に【共感する】震災の時が顕著でしたね。『避難場所の情報を回してくれ』、『ここにいることを伝えてくれ』、ツイッターなどは共感によるリツイートが沢山ありました。
7番、その情報が【相手の求めている物と一致する】いくら良い情報でも、その人が求めていない物は無視されるという意味です。
つまり、届けるべき人、『ターゲット』を正しく設定することが大事という意味ですね。雑な例ですが、通常の何倍もある大きさのあんパンを作ったとして、チラシを老人会で配るのは間違いで、大学生のラグビー部とか柔道部に配るのが正しい。という感じですね。」
「ああ、なんとなく解るよ。『情報』を届ける正しい相手や方法を選べってことでしょ。」
「そうですね。飲み込みが早い。8番のその情報に【触れることで高揚感を感じる】はステップアップした自分等が想像出来る。つまり、これらはブランドや、部屋をおしゃれにするとか、英語を習うっていう心理に則してます。
9番、 その情報を【記憶しやすい状態に置き換える】これは多少技術論ですが、『ハトヤ』のCMとかご存じですか?『伊東にいくならハトヤ』ってやつ、あとは、「コーンコーン湖池屋スコーン」っていうの、年代的に知ってますよね?あれらはつまり歌にして覚えやすくするわけですね。」
「なるほどねえ、しかしなんか、いきなりレベルが上がった話になったな、、」
「そうですね。この辺りまでくると、もうプロが考える話なのかもしれません。例えば『あんパン』の味を新しくしたとします。『あんパン』というものは昔からあるもの、なので『情報』としては魅力は少ない。
つまり2番は適応しない。普通に『あんパンが新しくなりました』とPOPだけ書いても情報が『届く』可能性は低いわけです。
そこでこの表を『指針』にするわけです。1番を使って連続して情報を出す。A看板にも書いて、POPも作って、動画でも流して、フェイスブック、ツイッターでもしばらく連続して出すという方法をとろう。
さらに、『あんパン』の制作工程とかを伝える事で、5番の感動を与えられないかとか、どう変わったかをしっかりと書くことで、8番の高揚感は与えられないかとか、9番を使って、あんパンの商品名を『あんパンあ~ん』とか『あんパンバージョン2.0』みたいに興味を惹く、覚えやすい形に変えてみようとか、、、、迷った時に思い出してもらえば、闇雲にやるよりはかなり効率的にできると思います。」
「なるほどねえ、、」
「長々と話しましたが、まずは『情報を出す』ことが大事です。これは変わりません。出さなければ届きません。でも、少し慣れたらここの部分も意識するといいです。知っておいて損はないので覚えておいて下さい。」
わかったと言って、もらったノートの切れ端を店の見えない所に貼った。『情報』も奥が深い、、