【第17話】『街バル』で街興し


『街バル』で街興し
ー街興しのプロローグー

朝起きて一仕事を終えた後、いつものようにフェイスブックを見ていると、一面食事の画像だらけ、それも一人一軒ではない、何軒も何軒も通っている。

「なんじゃこりゃ?」
よく見ると全ての投稿に『バル』の文字。

「ははあ、なるほど、、、」
いろいろな人の投稿を統合すると、どうやら最初に五枚つづりのチケットを買って、五軒の飲食店をはしごするイベントのようだ。一枚のチケットにつき、一杯のお酒と一皿のおつまみが出ている。

「こりゃ、おもしろそうだな、、、」
直感的にこの街にぴったりだなと思った。温泉街であるこの街は飲食店だらけだ。この街で開催されたらきっとうまく行くだろうなあ、、そう思いながら、一つの記事の投稿者に目をやると、

「あれ?これ土谷さんじゃん!」
それをアップしたのはあの『こんにちはハゲです。』のフレーズがトレードマークのあの居酒屋の主人だった。

「わざわざ、店を休んで行ったんだ、、、すげえな、、」
精力的な人だ。思わず笑みがこぼれる。[楽しそうですね]とコメントをいれてフェイスブックを閉じた。驚くことは数日たった後に起こる。

[おはようございます。ハゲです。]
いつものフレーズから、始まった投稿は中腹に

[私は自分の生まれ育ったこの街が大好きです。だから、この街が衰退していくのを黙って見てはいられません。イベント一つやって何が変わると言う人もいますが、一歩踏み出すことが大事だと思います。この街でも、『バル』を開催したいと思います。]と書いてあった。

「おお!」
思わず声を出した。この間も思ったが、このイベントはこの街にぴったりだ。大変そうだなと思ったけれど、きっといい街興しなると思った。

「協力出来ることがあったらやらなきゃな」
 そう言って、キーボードに手を置くと、

[がんばって下さい。応援してます!手伝える事がありましたら、ぜひ、お声がけ下さい]とコメントを書いた。

その数分後、フェイスブックのメッセージが入る。

[柳原さん、こんにちは、突然のメッセージすみません。今日はお願いがありましてメッセージを送らせていただきました。先日語り合ったように、この街は何もしなければこのまま衰退していくだけです。お願いです。一緒に街を盛り上げてくださらないでしょうか。先ほどの投稿を見ていただいた通り、この街で、『バル』を開催しようと思います。飲食店だけでなく、そちらのような物販店も参加出来るようなイベントにしたいと思います。
お店としての参加もお願いしたいのですが、まだまだ手伝ってくれる人がたりません。無理を言っているのは重々承知なのですが、実行委員としても参加していただけないでしょうか?]

メッセージを読み終わった後、これは大変な事になったと思った。実行委員ということになると時間も取られるし、簡単には、はい解りましたとはいかない。ましてや規模の大きくなりそうなイベントだ、手間も相当な物だろう。そんなことを考えていると、こんにちはと言って三木が店に入ってきた。

「あのさ『バル』って知ってる?」
挨拶もそこそこに聞いた。

「突然どうしたんですか?はい、知ってますよ。今、全国で人気のある街興しの方法ですよね。函館が発祥で、五枚つづりのチケットを買うと、参加店の地図が渡されて、その地図を片手に五軒のお店をハシゴするってやつですよね。」

「さすが良く知ってるねえ。」

「ありがとうございます。しかし、それがどうかしたんですか?」

「実はさ、それを今度この街でやろうって話になって、参加してくれないか?って言われてるんだ」

「パン屋がですか?あれはお酒のイベントだと思いましたが、、チケット一枚につきワンドリンクとワンフードがでるイベントですよね?」

「本当はそうなんだけど、お土産バルってことで、物販店もチケット一枚でお土産と交換っていうようにこの街ではやるんだとさ。」

「なるほど、面白いですね。」

「それでな、お店としての参加もお願いされているんだけど、実行委員会としての参加もお願いされていて今悩んでるんだけど、どう思う?」

「運営に携わるということですか?」

「そうなんだよ、規模の大きくなりそうなイベントだし、時間もかなりとられると思う。仕事にも支障があるかもしれないし、どんなもんかなあ?」

そういうと、三木は天空を見つめるように上を向きながら30秒ほど考えて、

「ふむ、面白いですね。これは参加したほうがいいです。もちろんお店としても、実行委員としてもです。大丈夫ちゃんと返ってきます。」

これもか?一体何が返ってくるんだと思ったが、そんな事はどうでもよかった。これで腹が決まった。
いや、もともと決まっていたのかもしれない。

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