【第23話】エピローグ


エピローグ
ー温泉街のパン屋さんの希望ー

『バル』が終わって2週間程すると世の中は連休に入った。観光地の側面も持つこの街にバルのマップをもって歩く観光客が目につく。
余ったバルのマップはガイドマップとして利用した。『柳原ベーカリー』でも、観光客と思われるお客様には積極的に渡した。土地勘のない観光客にはことの他喜ばれた。

こうなると予算がギリギリで、マップがあまり印刷できなかったことが悔やまれるがしょうがない。

そんなことを考えているとドアが開いて、勢いよくおやっさんが入って来た。おやっさんは行きつけの居酒屋の店主だ。

「おう!お疲れさん!」

「あっ、おやっさん、いらっしゃいませ。どうですかお客の入りは」

「正直少しは良くなっている感じだな、心なしか観光客が多いんだよなあ、、バルが関係してるのかなあ、、」

それを言われて思い当たる節があったのでおやっさんに伝える。

「おやっさん、バルの後なんですけどね、メールが一通来たんですよ。
『バルには行けなかったけど、ここのサイトは穴があくほど見ています。
次回、そちらに訪れた際にはあの店にしようか、この店にしようか楽しみなので、どうか閉鎖しないでください。そのままにしておいてください』
と、、、こっちとしては元々そのつもりだったから、通常の営業時間とかもいれてたわけですが、もしかしたらそういう人達がいるのかもしれません。」

「なるほどな、ホームページとか作るったって、うちなんかホントわかんないからさ、いや、ホント助かるよ。」

なるほど、年配の人にホームページを作れといっても無理な話だろう。そういう意味では参加するだけで、一つでも『情報』を出す物ができたのはいいことだと思う。

「そんなこんなで、仕込みを増やしてたらよお昼食い損ねちまってな、この間のお礼もいってなかったしよ、おめえんとこのパンが食いたくなって来たよ。」

「ありがとうございます!」

「あとよ、共同おしぼりあるだろ、あそこがありがたがってたぞ、凄いおしぼりがでたって、料理の材料だってなあ、ここら辺の人はここら辺りから調達するだろうから、結構動いたんじゃねえか、何枚ぐらいチケット出たんだよ」

「だいたい1000冊ぐらいですね。5枚綴りなんで5000枚ぐらいです。」

「じゃあ飲食8割としてもよ、4000食分の材料が動いたわけじゃねえか、今のこの街の現状を考えたら、これだけの物が1日で動くのは凄えことだし、なによりも最終的にお客さんが落とすお金が、この街の店に間違い無く落るわけだろ、お酒のイベントだから交通機関にも多少のメリットはあるだろうし、あとよ、エリア外の街外れの居酒屋あるだろ、「野風僧」、あそこの主人に聞いた話だけどよ、あのバルの日なんだけどな、やたらと人が入ったんだってよ。飲み足りない分なのか、自分が住んでいる場所に帰って飲み直したらしく、お店が忙しかったっていうぞ」

そんな効果も、、、この部分に関してはお馴染みさんが来ているわけだから、新規の顧客にはなり得ない部分はあるが、そこにお金が落ちることは間違い無い。いい事だと思う。

「お前達若え衆が頑張ってくれるからな、俺たちも頑張るよ」

四十越えているので決して若くないのだが、おやっさんから見れば永遠の若造なんだろう。

じゃあな、といっておやっさんは出て行った。静かになった店内で考える。

ほんの少しだけれども街が活気を取り戻した。でも、まだまだだ。『バル』も【年代事に考え方が違う】を当てはめると、参加してくれた人は30代40代の人がほとんどだった、三木も言っていたがフェイスブックがうまく機能して、この年代には『情報』が届いたのだと思う。
そう考えると他の年代に届く『情報』は何かと思う。

そしてこの『柳原ベーカリー』も昔からの【記憶】を持っているお客様の50代60代に加え、30代、40代の人が増えてきた。だけど20代のお客様はまだまだ少ない。20代に『情報を届ける』には【記憶】に残すには、どうすればいい?

『情報』の重要さが解ってきた自分は、今日も色々考えて、せっせと『情報』を出す。
(了)