【第14話】ショールーミング


ショールーミング
ー『その気にさせる』ことの重要性ー

ぼちぼち人は買いに来てくれるようになってきたものの、まだまだ暇な日はなくならない。雨でも降ろうものなら、あっと言う間にお客の足は閑古鳥になる。今日も雨が降っているせいか客足が鈍い。

この商店街にも、自分の店にもまだ魅力がたりないのだろう、、、いや、もしかしたら情報がまわっていなくて、伝えるべき魅力に気づいてもらえてないのかもしれない。

そんなことを考えていたら、ふと思いつき、店の前に貼っておいた『雨の日セール10%引き』というPOPと綺麗に並んだパンの写真をスマホで撮影し、フェイスブックにアップした。自動で連動しているツイッターに流れる。

「そもそも歩いている人が少ないから、いくらこういうPOPを貼っても効果は少ないよな。これをフェイスブックにあげれば、それを見てうちに寄ってくれる人がいるかもしれないからってなもんだ。おれも大分解ってきたじゃん。」

そんなひとり言をいうと、こんちは、と言って同じ商店街の電気屋のコンちゃんこと近藤大樹がパンを買いに来た。

「おっ、コンちゃんいらっしゃい」

コンちゃんはいつもニコニコしてる。愛嬌のあるキャラクターで商店街の人気者だ。

「どうよ、景気は?」

もう、商店街の店主同士が会ったらこれはお決まりの台詞だ。ヒマなので、つい世間話をしてしまう。

「イヤー、良くないねえー、あの街の外れにある家電量販店が出来てからまた一段と客足が減ったねえ、、、」

「家電量販店とか安いものなあ、、、」

「まあでも、最近は家電量販店も大変らしいよ。」

「どうしてよ」

「なんかさ、お客がさ実物だけ見に来てネットで買っちゃうんだって、まるでショールーム扱いだよ。」

「うちなんかは小さな電気屋だからさ、品揃えもショールームの代わりになるほどないから大丈夫だけどね」とコンちゃんはハハハと笑った。

ああ、【ショールーミング】ですね
次の日、その話を三木にするとすぐに答えが帰って来た。

「ショールーミング?」

「はい、その近藤さんの仰るとおりの事です。家電量販店が巨大なショールームになることです。家電量販店の一番の悩みの種ですよね。」

「なるほど、やっぱりインターネットはやっぱり勝てないのかなあ、、、」

そう言うと三木は、

「現在の消費者はインターネットで物を購入をする機会が多いというのは疑う余地のない事実ですが、インターネットには消費者側からみて【玄関まで持ってきてくれる】【多数の店舗を一覧で比べられる。】というメリットがあるものの、【送料がかかる】【商品手にとって確かめられない。】といったデメリットもあるわけで、インターネット通販の方が100%有利とは言えないと思います。

『ショールーミング』がなぜ行われるかというと、実物を手にとって確かめたいからですよね。これって、さっきお話ししたデメリットの【商品手にとって確かめられない。】を暗に証明してますよね。

家電は全く同じ物が売っているから、多少実店舗のほうが不利な部分もありますが、それでも実際の消費行動には、家電量販店に行くのだってガソリン代を使っているわけですし、時間だってかかってる、確かに安く買えるのは魅力ですが、帰ってからPC開いて、住所を入力して、、、そして届くのは数日後、、、みたいな手間を考えたら、僅かの金額の差を気にせずに買ってしまおうという人も絶対いると思います。

衣類や、雑貨にいたっては、全く同じ物を探す行為からして難しいのでその傾向はさらに強いと思います。

ではなぜ、インターネットばかり売れるのか?

現在の実店舗には『どうやってその気にさせるか』が足りない場合が多いです。

例えばインターネット通販で成功しているところのお店は、どんな商品にも必ず一つ一つ説明がついています。衣料品店を例に出すと、素材がなんで、サイズがいくつで、首から袖までの長さがどれくらいで、エリの部分はどう処理してある。そしてコーディネートの提案だったり、事細かに書いてあります。
パン屋さんなら、どういう材料を使い、どういう行程で、どのようにこだわって作っているか等々、、、『どうやってその気にさせるか』 に注力がされています。これと比べると実店舗の方はどうでしょう?商品は綺麗に陳列はしてあります。綺麗に陳列すれば確かに商品は魅力的に映るのですが、それはインターネット方も『写真を綺麗に撮る』という方法でやっているので、これだけではインターネットとの差別化はできません。

『うちはいい素材を使っている』等々で差別化を訴えたいとしても、 どんなにお店がいい素材を使って洋服や、パンを作っていても、見ただけで解る人は中々いません。世の中の全ての人がそんなに目が肥えているわけではないのです。特に食べ物なんて解る人はまずいません。

50代60代が聞いてくるので、全ての人が聞いてくる物と思ってお店側は『聞いてきたら答えよう』と思ってPOPを作っていません。ところが、主にインターネットを使う年代は30代や、40代、『聞かない世代』です。だから『情報』を送らなければいけないんですよ。」

三木は店内を見渡しながら、

「このPOPたち、そしてこの間作って流しているこの動画。どれもこれも『お客様をその気にさせる』為に作っています。【商品を並べているだけで売れる時代】はとっくに終わったのです。【一行の手間を惜しまない】ですよ。」

【商品を並べているだけで売れる時代はとっくに終わった】結局そういうことなんだよな、、と、心の中で繰り返した。