【第15話】フェイスブックの活用法4


フェイスブックの活用法4
ーみんなが『情報発信源』ー

ある日、行きつけの居酒屋のカウンターで一人で食事をしながらお酒を飲んでいると、後ろから『フェイスブック』で知った情報なんだけどさ、という話し声が聞こえ思わず振り向いた。

知っている顔ではない。講習会にも出ていた顔ではない。出で立ちはどうみても、そういうデジタルに強い感じがしない。どちらかというと土木業風で、人の事は言えた義理ではないが、とてもフェイスブックを使うようには見えない。

次の日にも、他のお店で『フェイスブック』という単語を聞いた。この人も講習会に出ていた人ではない。フェイスブックの講習会が終わって数ヶ月。この小さな町に異変が起こっていた。

ーーーそうですか、、うまく行っているようですね。
パソコンのほうに向かいながら三木は何事もなかったかのように言った。

「うまくいっているって、解ってたのかよ?」

「手間を掛けてもらった分は必ず返って来るっていったじゃないですか。あの時、20ページ以上ある資料を人数分全部コピーしてくれたから。こういう結果がでたわけです。」

一瞬、ああそうなんだ、と言いそうになったが、全然訳が分からない。資料をコピーするだけでどうやったらこうなるというのだろう?

「一体どうやったんだよ」

「フリーミアムですよ。」

「フリーミアム?」

「覚えていませんかね?講習会の最後に言った言葉。」

全然覚えていない。三木は見透かしたように笑いながら

「覚えてませんね。じゃあもう一度。『本日、皆さんにお渡ししたこの資料ですが著作権フリーです。最後のページにアドレスも書いてあります。このアドレスにアクセスするとこの資料と同じ物がPDFであがっています。どんどんコピーして、他の人にも渡してください。』です」

「ああ!あれか!」

「さらに言うと、あの資料の中にも文章で『著作権フリー』ということは書いてあります。そうすると、作者がいいといっているわけですから気楽にコピーできますよね。文中にも『著作権フリー』と書いてあるので、コピーをもらった人もコピーができる。その結果、フェイスブックを使える人が増える、、、と、、。」

 三木は屈託のない笑顔をうかべながら、

「まあ、『フェイスブックを教える』ということを商売にする場合は、これをやってしまうと儲かりませんけどね、私の目的は柳原ベーカリーに来る人を増やす事で、フェイスブックの先生で儲けることではないので、この方法をとりました。
『情報を受信するほう』も増やさないといけませんからね。上手くいってよかったです。
あとですね、商店街の人じゃ無い人が何人かいらっしゃったじゃないですか、商工会議所の方に聞いたら、やはり違う商店街の経営者さんとかで、、、でも、こういった『フェイスブック』のような新しいものに反応する方達ですから、もしかしたら、オピニオンリーダーかな、、、と思ったのですが、、、」

あの時来ていたメンバーを思い出した。確かにこの街では新しい事にも強く影響力がある。

「もしかしたらそれも関係しているのかもしれません。まあ、推測の域はでませんけどね。」

その後もいろいろなところでフェイスブックが、、という話がでていた。『友達』の数も増え、『情報』の量が格段に増えた。

フェイスブックを通じて繋がった人達が、自分と同じように繋がった人のお店に行き、そしてその写真をアップする。そしてまた、新しくそれを見た人がお店に訪れるという好循環を生んでいた。小売店の最も苦手な部分である『情報』を出すという部分を代わりにお客様が出してくれる。最初に思ったとおりになった。

それだけじゃないですね。

「『情報』を出してくれるのもそうなのですが、『この街のお金がこの街に落ちている』っていう側面もありますね。」
と、三木は言った。

ああ、そうか、、、確かに、、、うちでパンを買う人も増えた。もしかしたら、この街は凄いことになるんじゃないかと急に身震いがしてきた。